2008年03月14日

第三十五夜 レストラン『ソネ』

~神戸ジャズライブの灯はここから始まった~



この女将さんはいったい何百年生きているのだろう?と思う人がいます。
神戸を代表するジャズライブハウス「ソネ」の桂子ママのことですが、とにかく知っておられることや出てくる有名人の名前をあげれば枚挙にいとまがない。この方と話していたら、ジャズは敷居が高いとか、難しそうとかの感覚がなくなります。「こんなおもろい人がやっとるんだから・・・・」と思ってしまいます。

桂子ママはダンス好きの父上の影響もあって、いろいろな音楽を聴く環境にめぐまれていたらしく、小学1年生の頃から父上のためにレコードをかけてあげたりしていたと伺いました。レコードといっても戦前ですから、ステレオではなく蓄音機の時代で、手動式の蓄音機を回しながら竹の針を「そぉっと」のせるのに苦労されたようです。ハイカラで生っ粋の神戸人のご両親のお気に入りはやはりジャズだったらしく、ジャズライブの灯が神戸にともったのもそんな環境に育った桂子ママがいたからだと思います。
??歳を迎えられる今でも、着物姿で客席を回っては、馴染みのお客さんと言葉を交わしておられる姿はなかなか真似できるものではありません。それと年始とか周年記念などのライブではお茶席まで登場するライブハウスを僕は他に知りません。日本文化と西洋文化が見事に融合していて、とても神戸らしいと思います。

 ソネの魅力は、毎日ピアノトリオにヴォーカルが入り、11時頃まで4回のステージがあってライブが充実しているということだけでなく、お店の雰囲気がとてもおしゃれだと思います。椅子に座って壁を見上げると、骨董の壺がさりげなく並べてあったりしますが、これも雰囲気に無理なく溶け込んでいます。お店の雰囲気を含め、全体が桂子ママのアート作品そのものという感じです(ここはライブ演奏と満足顔のお客さんたちがお店の風景に溶け込んで、お店・ジャズ・お客さんたちによって毎晩創り続けられる現代アート作品と言っていいと思っています)

昭和30~40年代はジャズ喫茶が全盛の頃です。〔コーヒー一杯で何時間も喫茶店の片隅に自分の居場所を作ってジャズのレコードを聴くわけです。昭和30年代はレコードプレーヤーなどがあまり普及していなかった頃ですから、貴重な音楽空間だったのでしょうね。
因みに、レコードは今から25年くらい前(昭和60年頃)にあっと言う間にCDプレーヤーに取って代わられましたが、細かい塵などでパチパチという音が入って、今思うとレコードもなかなか味がありました。ダイアモンドの針でレコードの溝をなぞって音を拾うわけですから、レコードがちびたらどうしようと思っていました。僕の不安を解消したのがCDでした〕
 そんなジャズ喫茶時代の昭和44年(1969年)にレストランとライブとバーとを組み合わせて「ソネ」を立ち上げられた桂子ママは先見の明というか実業家のセンスがある人です。多くのミュージシャンがここから育っています。



今では、若い子達にジャズのよさを知ってもらいたいという思いで、東京などから修学旅行生たちが来たときに、校歌をジャズ風にアレンジした演奏でお迎えしたり、プロとブラスバンド部の子達とをセッションさせたり、心からジャズと仕事を楽しんでおられます。桂子ママが心置きなく好きなことをやれるのには、それをサポートする40年来のママの相方である永遠の淑女が存在することもお伝えしておきます。
 
 レストラン「ソネ」は山手幹線の信号から北野坂を少し上った坂の左手にあります。トレードマークであるタバコを吹かすウィスキーボトルのような体つきのおじさんの看板が迎えてくれます。このおじさんのくゆらす煙はSONEと読めるようですが、いかがですか?

 日曜日の昼下がりのジャズライブ(午後2時~、3時~で入れ替えなしの2ステージ)は1,000円(1ドリンク付き)でとってもお得ですよ。

ホームページはこちらです。
http://kobe-sone.com
  


Posted by alterna at 19:24Comments(3)