2008年05月19日

第三十八夜『おおみや』~天女が微笑む立ち飲み屋

『第三十八夜『おおみや』~天女が微笑む立ち飲み屋~港街・BAR・アート(4)』

サブタイトルはなんのことやら判らないと思います。
 『おおみや』は酒屋さんが経営する立ち飲み屋さんです。場所は乙仲通に面しており、立ち飲み屋としては少し意外な所にあります。


乙仲通り・・これは正式な名称ではなく通称名です。
元町商店街の南を東西に栄町通が通っています。そのさらに南の細い東西の通りをいつからか、誰とはなく「乙仲通」と呼ぶようになったようです。
戦前の法律で輸出入手続きの取扱業者(海運仲立業)の分類が甲種、乙種となっていて、このうち乙種の取扱業者が乙種仲立業、これが縮まって「乙仲(おつなか)」と呼ばれていました。この乙仲さんが多く事務所を構えていたことから、栄町の南の通りを乙仲通と呼ぶようになったようです。正式な名称ではないので地図には載っていません。4月にこの乙仲通の愛称が公募されていましたので、近々地図や案内板に新しい名前が載ると思います。
乙仲通には古い海運業などの事務所ビルが多く残っていて、ある意味では神戸の文化資源だと思います。ここ数年来、この古い事務所スペースに新しい感性が入り、ブティック、アクセサリー、バー、カフェ、レストランなどに見立てたお店が多くできて、結構流行っています。
トアウエスト、トアイースト、磯上・・と中心市街地を取り巻くやや場末感のあるエリアが個性で賑わいを創り出してきましたが、乙仲通もそのひとつだと思います。

ところで、『おおみや』は立ち飲み屋さんです。マスターは気のいい方で、しかも注文すればショウガのてんぷらから焼きソバ、卵焼きなどなどいろいろな手料理を作ってくれる器用な方です。
早いときは9時過ぎには暖簾を下ろして「やれやれ」と一服されているのですが、いったん閉めた店を「今から10人で行くから開け!」と言って無理やりこじ開ける人がいます。元町のMR酔っ払いの吉田先生ですが、別にマスターの方に負い目はないのですが、どうしたことかいったん出来上がった力関係というか、人間関係というか、開けなかったら次にお店で何を言われるかわからん、という気もあるようで、これも傍目にはよく判ります。素直に開けたほうが無難という判断は正しいと思いますが、「マスターいつもありがとうございます」としか僕にはいえません。


この大宮さんのお店の壁にはふくよかな天女の絵が飾ってあります。奥方の輿入れの品のひとつのようですが、正真正銘の版画家「棟方志功」の肉筆画です。立ち飲み屋さんに棟方志功・・・この取り合わせの妙も神戸らしさを感じます。


ふくよかな天女は毎夜酔っ払いにやさしく微笑みかけてくれています。
 この安くてうまいお店は南京町の西門を南へ、栄町筋を越えて最初の信号を西にいったすぐのところ(乙仲通に面して)にあります。
  


Posted by alterna at 16:49Comments(0)