2009年02月23日

第五十五夜 アカデミー・バー

~港町・BAR・アート(8)~

港町・神戸のバーを記録に残そうと出版された「酒場の絵本」は神戸出身の切り絵作家成田一徹さんの作品で構成されています。開くと「グッドバーに捧ぐ」という文字が目に入ります。
それをめくると、まず「ACADEMY BAR(アカデミーバー)」が出てきます。1922年開業ですから、戦前、しかも大正時代です。その建物は、ツタが絡まり続けて、夏頃に来てみると緑の塊のようにも見えます。窓ガラスはなつかしいすりガラスで、建物は一見して年代物、というか、よくもまあ水害にも空襲にも震災にも負けずに残ったなと思うような風情です。絡まったツタのお陰で震災の揺れにも持ちこたえたのかもしれません。昼間初めて見た人にはこれがBARとは想像できないかもしれません。

写真:(上)アカデミーバー 夏の姿 (下)アカデミーバー 冬の姿



内部はまさにレトロそのもので、神戸で活躍した洋画家の大先生たちの絵が名刺代わりに壁に描かれています。今生きておられたら100歳以上の人ばかりです。マスターの杉本さんに伺うと、小磯良平、田村孝之介、竹中郁、小松益喜、伊藤継郎、小出卓二、津高和一・・・などなど。よくもまあこれだけの芸術家がそろったものだと思います。僕が気に入ったのは写真右下スミに藍色に包まれた人型の絵。これは津高和一さんのものと伺いました。この大物作家ですらこの中では若手になりますから、遠慮してスミに描かれたようです。
(写真の絵が誰のものか分かる人はこの道?の達人です)

写真:アカデミーバー壁画



カウンターは分厚い桂材の一枚板で、時間と人が醸し出した光沢があります。
そのカウンターの向こうでは、ハンチングを被った2代目マスターの杉本さんが、画家の先生方との思い出を懐かしむようなしぐさで座っておられます。
建物自体が内も外も芸術作品のようです。

写真:アカデミーバー店内



アカデミーバーは三宮からフラワーロードを北へ、加納町3丁目の交差点の北東の角(歩道橋を降りたところ)に小ぢんまりと蹲っています。お店の入り口には『翰林院酒肆』(「カンリンインシュシ」と読むようです。辞書には「翰林院」はアカデミーの訳語とあります。「酒肆」は「酒店」を意味するようですので「アカデミーバー」の意になります)という看板が架かっています。


  


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2009年02月12日

第五十四夜 コースターも積もればアートになる?


写真:10年ほど前に買ったコースター その1

 写真の額に入っているのは雑貨屋さんで10年ほど前に買ったコースターです。多分外国のもの。お洒落に見えて、ジグソーパズルの額にでも入れたら面白い・・・と思い、厚紙に両面テープで貼り付けて作ったものです。家では廊下やトイレの壁などに架けていますが、ときどき目が合うと「なかなかセンスがいいではないか!」などと一人で悦に入っています。


写真:10年ほど前に買ったコースター その2



その後、BARなどに行って気に入ったコースターがあるともらって来る、ということを続けてきたところ、結構そろいました。
お店に入って座るとコースターが置かれますが、持っていないコースターなら横に退けておいて、冷えたビールのコップなどはテーブルに直接置いてもらうことでコースターがふやけないようにして、もらって帰ります。
お店の人に自分が神戸のお店のコースターを集めていて、額装して飾る予定だと言うと、快く「どうぞ」といってもらえることが多いです。特にマスターとしゃべれるようなお店は新品のものを数枚差し出してもらえることがよくあり、ちょっとうれしい気分になったりします。


写真:コースター コレクション


直径10cmくらいの円が表現空間ですから、伝えたいイメージを抽象化、簡略化して表現する必要があります。コースターにもそれぞれのお店の特色が出ていて面白いと思いますし、神戸らしさが凝縮されたデザインの宝庫であるとも思います。
飲みすぎて昨晩のことをよく覚えていないときがありますが、なぜかポケットにコースターが入っていて・・・「ああここに行っていたのか」と記憶を取り戻すきっかけになってくれることもあり、僕にとってはなかなか気の利く存在です。

そろそろ神戸のBARシリーズを額装したものをつくろうと思っています。

  


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