2007年12月04日
第二十七夜 「幻のジュラルミン街を捜せ」

写真:昭和46年発行「こうべ元町100年記念誌」より
ジュラルミンという言葉に僕は二つのことを連想します。
ひとつは時効が成立しましたが、1968年に起こった3億円事件で3億円のお札が入っていたトランクがジュラルミン製だったと思います。もうひとつは機動隊が隊列を組んで暴動などに立ち向かうときにジュラルミンの盾を持っていました。
元町には終戦後の間もない頃「ジュラルミン街」があったようです。戦闘機につかうジュラルミンが終戦とともに不要になり、店舗などの建て替えの材料に使われたということです。それほど大きな区画ではなかったように聞きましたが、ジュラルミンの店舗など今は跡形も無くなっています。
焦土のなかではちょっと異様な感じだったでしょうし、現代アートよりも現代アート的な感じで、陽が当たるとキラキラと眩しかっただろうなと思います。
と、ここまで原稿を書いて、この内容ではインパクトが弱いのでそのままにしていました。
ある日、ばったりと出会ったのが現代アーティストの宮崎みよしさん。
「お茶飲みますか?」
「はいはい。いいですよ。」
と当たり障りのない会話を交わしながら、ふとジュラルミン街のことを聞いてみましたところ・・・なんと!
「それ元町3丁目にあったのよ。友達に聞いた話やけど、まだ当時の痕跡があるみたいよ」
「私何回か探したんやけど、わからへんのよ」
ジュラルミン街を捜そうと思うこと自体がフツーの人ではない。やっぱりこの人は変わっとるわ・・・と内心思いながらも・・・好奇心が湧いてきました。
そして「ヘルメットに地下足袋はいて、バールをもって一度一緒に探索しませんか?」ということになりました。
11月の下旬、午前10時。集合したのは二人。
まず、宮崎さんが昭和46年発行の「こうべ元町100年記念誌」を準備してくれていまして、ジュラルミン街がどのようなものだったかを確認しました(宮崎さんの事務所は元町6丁目の西端近くにありますが、資料の宝庫です。神戸や兵庫に関係する資料も一杯ありました)。ジュラルミンは2~3間長屋のようになった2階建ての建物に使われていたようです。元町3丁目のジュラルミン街は当時もっとも早く再建された商店街だったようです。
いつも通る商店街でまったく気づかないわけですから、どこかの壁かなにかの剥がれているようなところから、ジュラルミンが顔を出しているのかな・・・などと想像しながらの探索です。二人連れが泥棒に入る店舗を捜しているように見えたかもしれません。世間体も多少はあるので、なかなかスリリングな宝探しです。3丁目をぐるぐる回るわけですから。
捜してみましたが、多くの建物が改築されていて、結局「これだ」というものは見つかりませんでした。しかし古い商店の年配の方に聞くと「ああ、あったね」という返事が返ってきましたから、まだ、覚えている人がいるようです。

写真:ジュラルミン街探索隊-1-
100年記念誌の写真を撮った場所と思われるところから、同じような形が残っていないかを捜してみますと、写真にあるように、商店間の壁の中空に銀色の仕切り羽根のようなものがみえますが、ひょっとするとこれかもしれません。その向うにある茶色い柱状のものも同じような形をしています。塗装の剥がれたところから銀色の金属がのぞいていましたから、これもそうなのかもしれません。
また、3枚目の写真にある店舗2階部分の白い羽根状の柱も形状がよく似ていますので、取り払うとジュラルミンが出てくるかもしれません。

写真:ジュラルミン街探索隊-2-
今回の探索では結局「これかもしれない」というところまででした。
将来元町商店街3丁目の建物が取り壊されることがあれば、生きてる限り立ち会って、ジュラルミンが出てくるかどうか確認しましょう、ということで今回の調査はひとまず終了しました。
(新しい展開があればまたお知らせします)
※元町のMR酔っ払いの吉田先生に聞きますと、「名前が長いのでジュラル街とも言っていた」らしいです。
Posted by alterna at
19:45
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